クラウドによるRopaxフェリーの性能調査

    Aji Purwanto     ホワイトペーパー     07.10.2016

チーム構成

エンドユーザー – SimFWD社のインターン、ENSTA-Bretagneの修士課程学生 Ioannis Andreou氏

チームエキスパート – ギリシャ、アテネのSimFWDエンジニアリングサービス社 Vassilios Zagkas氏

ソフトウェアプロバイダー – NUMECA International S.A. ビジネス開発ディレクター Aji Purwanto

リソースプロバイダー – CPU 24/7 GmbH ソフトウェアエンジニア Richard Metzler氏

技術エキスパート – UberCloud Inc. Hberal Zitouni Korkut氏およびFethican Coskuner氏

SimFWD様は、輸送および建設業界で研究、開発およびその適用に関わるエンジニアリングサービスを提供する企業です。同社は、船舶設計に適用されるCFDやFEMなどのコンピューター支援エンジニアリング技術に重点を置いています。SimFWD様は、コスト効率の高い方法で、一般的で複雑な問題に対する包括的ソリューションを提供し、専門のエンジニアリング解析グループまたは部門に通常発生する間接費をなくします。SimFWD様は、カスタマイズされたエンジニアリング解析とソフトウェアソリューションを顧客に提供して、製品設計と製造プロセスの開発を支援することを目指しています。 www.simfwd.com.

Ioannis Andreou氏は、現在、ENSTA-Bretagne Universityでの研究と、先進流体力学の修士号の取得に向けてSimFWD様でのインターンシップを完了しようとしています。同氏のインターンシップでの主な業務は、SimFWD様が提供する一連のRopaxの船体形状をさらに発展させることでした。SimFWD様は、運用に関するさまざまなニーズに合わせて幅広い船舶のサイズに対応するため、Ropaxのモジュラー設計を開発してきました。プロジェクトの最初の段階は、全長120~140 mの完全にパラメトリックなRopaxの船体形状の検証です。

 

ユーザー事例

目標1: 近代的なRopaxの船体形状(全長140 m)の平水における抵抗を計算します。この船体形状は、環境フットプリントを少なくすると同時に安全基準を高めることを重視して設計された、SimFWD様が提供する一連のRopaxの船体の一つです。以下に主要な寸法を示します。

全長 (L.O.A.): 140.00 (m)

幅: 23.00 (m)

航海速力: 26.00 (kn)

喫水: 5.700 (m)

方形係数 (T=5.70): 0.57

目標2: SimFWD様のインターンエンジニアが、UberCloudアプリケーションソフトウェアコンテナでFINE™/Marineを使用することに習熟し、その費用対効果を現在使用されている社内リソースと比較します。ベンチマークは、CPU 24/7およびUberCloudによって提供されるベアメタルクラウドソリューションで分析されました。すべてのシミュレーションは、NUMECAのFINE™/Marineソフトウェアのバージョン5.1を使用して実行されました。SimFWD様は、短時間で初期の出力曲線を生成することと、船のバルブの小さな設計変更が及ぼす影響を把握することを目標にして、FINE™/Marineモデルおよびシミュレーションパラメーターの設定を行ってきました。

 

課題と利点

このケーススタディは、困難に直面することなく完了しました。UberCloudコンテナ内のファイルへのアクセスから、CPU 24/7クラウドでのジョブの実行、ローカルワークステーションへの結果の取得まで、プロセス全体が非常に便利で、遅延することもありませんでした。ユーザーにとって使いやすいインターフェイスは大きな利点となりました。

 

シミュレーションのプロセスと結果

船体形状の計算は、20 kts、22 kts、24 kts、および26 ktsの4つの異なる速度に対して実行されました。すべての計算は、22 ktsの速度を除いて、約180万個のセルからなる流体ドメインを用いて実行されました。22 ktsについては、約250万個のセルを含んだ、より細分化されたメッシュが追加で計算されました。

 

図1 C-Wizardによる自動メッシュセットアップ

 

図2 26ノットで航行中の場面:浸水面積は1919.96 m²

 

 

図3 船体長方向Xの波高

図4 相対速度で色付けした流線

 

船体の圧力の影響 

船首の圧力は、最も影響を受ける領域、船首、および喫水線入り口付近のステムで通常と同様な分布となっています。

 

図5 全体的な船体の圧力

 

図6 船体における流れの流線

 

以下は、シミュレーションの設定に関する詳細の一部です。

時間ステップ数: 1500

非線形反復回数: 5

UberCloudは16コアのコンテナを提供し、各速度に対する16コアの平均計算時間は約4時間でしたが、ほとんどの場合、低速度に対する計算のほうが、速く収束しました。このことによって、FINE™/Marineがスケーラビリティの観点からも効率的であることが証明されました。

次のステップとして、パラメトリックジオメトリーモデルを使用して、実現可能な小さな変更を球状船首形状に対して行い、年間で最も典型的な船の運航速度約22ノットに対する影響を評価しました。以下は、バルブの設計を変更した後の波高を比較した図です。図7の左側はバルブを変更した場合で、右側は標準的な場合です。バルブを変更した場合のほうが、波を示す質量分率の分布の変化が減少し、それ以外の結果はほぼ同じであることがわかります。バルブの形状と対応する体積に小さな変更を行うと、22ノットの運航速度では5%近く減少が見られ、22ノットを超える速度では減少はわずかでした。

 

図7. バルブ変更後の波高の比較

 

図8. 船底から見た22ノットでの波高の比較

 

結論

これらの計算はすべての速度で良好に収束しました。さまざまな裸船体の抵抗も経験的な結果や同様の設計と比較しましたが、これについても全体的な結果は、予測として信頼できると思われました。これにより、ユーザーは初期設計プロセスで設計空間を設定し、次のステップで正式な、または自動化された最適化プロセスによって、どのように船体を変更するのかを検討することができます。結果からは、船首の造波抵抗と船尾の流線を最適化するための余地について貴重な洞察も得られました。

  • このケーススタディで、CPU 24/7 HPCベアメタルクラウドソリューションは、スループットを高めたり、大規模で複雑なモデルを解析したりするNUMECA FINE™/Marineユーザーに、パフォーマンス上の利点を提供することが示されました。
  • FINE™/Marineは、特にC-Wizardや埋め込みの自動完全六面体メッシュ作成ツールであるOMNIS™/Hexpress、使いやすさ、高い性能、優れた精度を備えた専門性の高い実績あるツールを造船技師に提供します。CPU 24/7とUberCloudは、効果的に社内でHPCの専門知識を維持する必要性をなくします。
  • コンテナプローチにより、ソフトウェアやハードウェアのセットアップが遅れることなく、ハイパフォーマンスのクラスタとアプリケーションソフトウェアに即時にアクセスすることができます。
  • ブラウザベースのユーザーインターフェイスはシンプルで応答性に優れ、かつ強力です。

 

付録:

NUMECA FINE™/Marine UberCloud Containers用のUberCloud Application Containersはすぐに実行できるパッケージのソフトウェアです。これらのパッケージは、エンジニアが手持ちの作業を完了させるために必要となるツールを提供することを目的としています。クラウドにおけるこの実験では、パフォーマンスを損なうことなく、FINE™/MarineソフトウェアをCPU 24/7ベアメタルサーバー上で実行中のコンテナに事前にインストールした上で、設定してテストしました。このソフトウェアは、ソフトウェアのインストール、複雑なOSコマンドの処理、または設定を行うことなく、文字通りにすぐに実行できる状態になっていました。UberCloud Containersでは、コンテナがワークステーションからサーバー、さらにはクラウドにまで移植可能であるため、エンジニアは幅広い種類のリソースから選択できます。クラウド事業者やIT部門は、基盤となるソフトウェアのインストール、チューニング、およびメンテナンスが不要となるため、多様な選択肢を制限する必要がなくなりました。これらのユーザーは、この複雑さを解消するためにUberCloudコンテナを利用することができます。この技術は、コンテナがハードウェアと緊密に結合されていないハードウェア抽象化も提供します。ハードウェアスタックとソフトウェアスタック間を抽象化しているため、ベアメタル環境に通常備わっていない使いやすさと俊敏性が備わっています。

 

ケーススタディの著者: Vassilios Zagkas氏、Ioannis Andreou氏

 

 

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Posted by Aji Purwanto

Aji Purwanto