Masten Space Systems社: NUMECA CFDソフトウェアによる再利用可能な宇宙船のイノベーション

        顧客事例     16.09.2016

つい最近まで、軌道に衛星を打ち上げたロケットは、1回利用した後に完全に廃棄されていました。今でも、ほとんどの打ち上げでこのように廃棄されるのが一般的です。この1年の間に、第1世代の再利用可能な衛星の打ち上げが実証され、再利用可能な打ち上げのビジネスケースが作られました。

米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)による実験宇宙船(XS-1)プログラムの主要な契約企業として、Masten Space Systems様は、次世代の再利用性に焦点を当てた設計上のイノベーションを起こして、打ち上げ機を開発しています。DARPAのXS-1プログラムは、航空機と同等の再利用性と航空料金を達成することで、宇宙船として実用化できるまでの時間とコストを数桁規模で削減することを目標にしています[1]。DARPA XS-1のプログラムマネージャー Jess Sponable氏は次のように述べています。「10日間で10回飛行することは、現時点ではSpaceXまたはBlue Originの能力をはるかに超えるものだと考えています」[2]

 

 


Artistic rendering of the XS-1 vehicle
Masten様のXephyrによる優れたレンダリング。地上帰還前の上段切り離し後の様子。| 資料提供:Masten Space Systems様

"Masten Space Systemsは、次世代の再利用可能な衛星打ち上げシステムを設計するために、HPCの規模でFINEツール群を大いに活用しました。私たちは、打ち上げや再突入のために、これまでに開発されていなかった空気力学的構成を開発しました。最初の風洞試験で設計の重要な側面を確認したところ、予測は測定値と同等でした" --Masten Space Systems 空気力学リーダー Allan Grosvenor氏


 

必要条件には、1回の飛行で、90度傾いた100 nmiの基準軌道に3,000ポンド(約1.4トン)の重量を輸送するコストを500万米ドル未満にすることなどがあります。Masten様のエンジニアは、幅広い飛行条件にわたってブースター設計を最適化する必要がありました。たとえば、海面の高さから上昇して上段の切り離し点で極超音速に達し、その後再突入して帰還するなどの飛行条件です。

NUMECA-USAは、Masten様の空気力学リーダー Allan Grosvenor氏と同氏が率いるチームと緊密に連携し、HPCを基盤としたワークフローを開発しました。このワークフローでは、軌道の同時最適化とともに空力性能、制御、負荷、および空力加熱を考慮した打ち上げ機の構成について、概念の開発、改善および最適化を可能にしています。

HIFiRE-1高速遷移実験の研究は、NUMECAのソルバーによる予測を検証するために使用されたテストケースの1つとなりました(図1)。HIFiRE-1実験(Wadhamsらによる、{j}2008年)は、CUBRC LENS極超音速トンネルで円錐-円柱-フレアの構成をマッハ7.2の流れ(Re 1E7)に晒します。数値結果には、関連するフィジックスがキャプチャされ、圧力や熱流束、特に断熱システムの設計に重要なピーク時の熱が予測されています。



図1. 上:HIFiRE-1実験装置. 下:OMNIS™/TurboのCFD解析と実験データの比較[4] | 資料提供:Masten 空気力学リーダー Allan Grosvenor氏


最適化プロセスを説明するために、テレビシリーズ「宇宙空母ギャラクティカ」の戦闘攻撃機コロニアル・バイパーにヒントを得て、架空の高速航空機に対するテストケースを作成しました。

航空機の設計は、NUMECAのAutoBlade™モデラーでパラメトリックに制御されています。パラメーターのセットにより、キャノピーの長さと高さ、翼と垂直安定板の角度と後退角、ノーズの半径とドループを制御します(図2)。豊富なパラメーターのセットを使用して、胴体、リフティングおよび制御サーフェスのすべての部分に対して3D形状をより詳細にし、より多くのバリエーションを持たせることができます。



図2. AutoBlade™で制御されるパラメトリックな設計バリエーション


設計では必然的に打ち上げと帰還の軌道全体を考慮する必要がありました。Masten Space Systems様が実施した体系的な研究では、ほとんどの場合、飛行角度のバリエーション(たとえば、ピッチ、ヨー、ロール)および空力制御面の角度を含む複数の重要な飛行条件を網羅した検討が実施されました。以下の例では、再突入に焦点を当てたこれらの研究の一部を示しています。

DoDHPCMP(米国国防総省のハイパフォーマンスコンピューティング近代化プログラム)のスーパーコンピューター[3]を利用して広範な研究を実施しました。計算パイプライン(図3)では、高度な設計発展プロセスを実施するために実行された系統的なワークフローを示しています。Masten Space Systems様は、NUMECA製品を使用した場合にのみ、高品質のグリッド(流れドメイン離散化)を体系的に生成し、高精度の解を求めることができたと報告しています。



図3. HPC計算パイプライン | 資料提供:Masten Space Systems様


メッシュ作成タスクは、NUMECAの新世代マルチコアメッシュ作成ツールであるOMNIS™/Hexpressを使用して自動化されました。このツールは、CAD形式や品質に関わらず、複雑な形状に対してメッシュを生成するように設計されています(図4)。

図4. 標準的なメッシュ作成手順とNUMECAの効率的なアプローチとの比較


このツールは、完全六面体と六面体主体のメッシュを完全に並列に、かつバッチモードで生成するため、Masten様の課題への対応に最適なツールとなりました。Masten Space Systems様は、全六面体メッシュを生成するオプションを利用しました。
図5. コロニアルバイパーのモデルのCFDグリッドビュー | 資料提供:Masten Space Systems様


CFDシミュレーションは、NUMECAのOMNIS™/Open-DBS CFDソルバーを使用してすべて実行され、後処理は、すべてのスクリプトをバッチで完全に自動で実行して行われました。完全な3D解析をデータマイニングすることで、最適化プロセスが促進されます。

以下のアニメーションは、再突入の性能と安定性について、基準となる打ち上げ機と新しい設計を比較しています。


 図6. 再突入マトリクス結果の比較:基準(左)と変更後(右)の設計



図7. 最適化された設計が基準のモデルよりも大幅に優れていることを示す性能と安定性のプロット | 資料提供:Masten Space Systems様


 

本記事で紹介した組織

Masten Space Systems社は宇宙進出に対する障壁を低くしています。同社は人類の存在を太陽系全体に広めるという戦略的な目標を共有し、その目標に貢献することをミッションとしています。そのためのアプローチとして、再利用性を追求しています。同社の技術開発は、惑星や他の天体への正確で安全な着陸を実現するために、突入、降下および着陸技術(EDL)に特化しています。詳細はこちら

NUMECA Internationalは今日、計算流体力学(CFD)とマルチフィジックス解析、および最適化の分野で、最もイノベーティブな企業であると認められています。創造性、イノベーション、そして品質を力に、NUMECAは世界の主要産業を支援するソフトウェアツール群を開発しています。

[1] DARPA pushing new effort with Experimental Spaceplane, XS-1 (nasaspaceflight.com)

[2] DARPA experimental spaceplane program moves into next phase (spacenews.com)

[3] Supercomputers Lower the Cost of Space Access (digitaleng.news)

[4] HIFiRE-1 Mach 7 aerothermal heating prediction (researchgate.net)

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