ルノー: ターボコンプレッサー用排気ガス再循環(EGR)の空力最適化

        顧客事例     06.12.2019
著者: Stephane Guilain(ルノー/テクニカルエキスパート) , Donavan Dieu(Numflo/シニアコンサルティングエンジニア)

 
大気汚染と燃費効率の問題は、熱エンジン開発において今後数年間で大幅に改善しなければならない項目です。世界中の都市で大気汚染が問題となっており、自動車メーカーは、運転スタイルや気候など、いかなる条件においても、できるだけクリーンで効率的なシステムを市場に提案することを政治的に求められています。
 
CO2を減らして地球温暖化への影響を減らすには、車の性能を落とさずに燃料消費を大幅に制限する必要があります。環境負荷低減の要求の動きは法律にも反映され、最新のEU7排ガス規制と新しいCAFE規制が2023年からヨーロッパで施行されます。
 
これらの目標を達成するために、圧縮機の結露などの固有の悪影響を考慮しながら、設計の改善を通じて損失を最小限に抑えるために、自動車のすべての部品を綿密に解析しました。このプロジェクトを進めるため、ルノーはNUMECA InternationalのコンサルティンググループであるNumfloに着目しました。NUMECAは、マルチフィジックスの設計と解析において、トップレベルの知見を持つことで知られています。はじめの研究の具体的な焦点は、CFD解析を通してターボ圧縮機の効率に対する低温排気再循環(LT-EGR)の影響を評価することでした。このプロジェクトでは、NUMECAソフトウェアのパワーと信頼性が素晴らしい働きを見せました。プロジェクトの最後に、Numfloによって得られた流体解析結果を使用して、ルノーは専用ソフトウェアで結露解析を実施しました。結露は、周囲温度が低い場合に発生し、長期的にブレードに損傷を与え、着氷の問題を引き起こす可能性があります。
 

Representation of the EGR geometry

形状

この研究は、LT-EGRインジェクションの以下5つの形状パラメータが、コンプレッサーのホイール効率に与える影響に着目しています。

  • EGRインジェクションの半径
  • EGRインジェクションとコンプレッサーの間の軸方向距離
  • 入口パイプの周りのEGRの方向を定義する3つの角度

EGRの形状は、IGG™により、スクリプトを使用して生成されます。このスクリプトは、5つのパラメータのセットごとに新しいジオメトリを自動的に生成します。入口パイプとコンプレッサーホイールにはルノーが提供するものが使用され、シミュレーションプロセス中にその寸法は変更されません。

 

メッシュ生成

ホイールのメッシュは、自動メッシュ生成機能を持つOMNIS™/AutoGridで作成された、ハイフィデリティなブロック構造格子で構成されています。メッシュ生成は、ホイールの流路の1ピッチに対してのみ実施しました。入口パイプとEGRに対しては、OMNIS™/Hexpressを使用して非構造格子を自動生成しました。入口パイプとEGRのメッシュ生成プロセスは、専用のスクリプトを使用して自動化されており、EGRの位置に関わらず高品質のメッシュを生成できます。最後に、両方のメッシュを結合し、CFDシミュレーションに使用される最終的なメッシュが完成します。

 

Non-Linear Harmonicアプローチ

OMNIS™/Open-DBSは革新的なNon-Linear Harmonic(NLH)法を使用して、入口パイプとEGRによって生じるインペラ内部の流れの乱れを考慮します。このアプローチは、周波数領域の流れの攪乱を解き、最先端の時間進行モデルと比較しても、高精度な数値計算結果が得られ、計算コストを大幅に削減します。このアプローチにより、空力性能に直接影響を与える入口パイプ内で生成された360°の流れの乱れを、ホイールに伝達します。

IGG™スクリプトによって生成された様々なEGR形状の例

シミュレーション設定

作動流体には理想気体を採用し、各境界には次の境界条件が適用されます。

  • メイン入口境界:全温・全圧および流れ方向
  • 第2入口境界:質量流量
  • 出口境界:質量流量

計算は、初期条件としてドメインごとの定数値を使用して開始されます。

 

Results

境界条件の概略図

DoE(実験計画法)は、FINE™/Design3DとMinamoモジュールを使用して生成されます。 «Latinized Centroidal Voronoi Tessellation»法を使用して、合計26個の構成がランダムに生成されました。データベースの結果を分析すると、ホイールからEGRが離れている、およびEGRの半径が小さいケースで高いホイール効率が得られていることが明らかになりました。さらに流れ解析を行うと、最適な構成では、主流とEGRからの流れの混合が発生し、コンプレッサーホイール入口での乱れが少なくなることがわかりました。

Minamoモジュールを活用して、データベースの詳細な分析を実行し、各パラメータによるパフォーマンスへの影響や相関性を理解することができます。下図に示す「ANOVA」グラフでは、設定した性能項目に対する自由パラメータの影響力を円グラフ化しています。

 


“ホイールからEGRが離れている、およびEGRの半径が小さいケースで高いホイール効率が得られていることが明らかになりました。”


 

ベースラインと最適設計の比較 6つの自由パラメータの「ANOVA」グラフ

 

「自己組織化マップ」を使用して、2Dプロットに多次元データを投影することもできます。エンジニアは、各自由パラメータが目的の性能項目にどれほど影響を与えるかを簡単に確認することができます。下図に、自由パラメータと性能目的値の自己組織化マップを示します。目的値の緑色の枠囲まれた領域では、最高値を示すパラメータ”L”と最低値を示すパラメータ”GAMMA”の影響を考慮しなければなりません。

自由パラメーターと最終目標の間の相関関係を示す自己組織化マップ

 

結論

Numflo のCFDの結果に基づいてルノーが実施した結露解析によって、ホイール効率と結露の改善は、各自由パラメータの反対の値の選択に繋がることが明らかになりました。つまり、ホイールの効率を上げたい場合には、必然的に結露も多く発生するということです。

以下の図は、EGRの2つの最も支配的な形状パラメータ(コンプレッサー平面までの距離とEGRインジェクション直径)が、効率損失と結露指数に及ぼす影響を示しています。図中の気泡の大きさは、効率損失と結露指数の大きさに比例します。図より、EGRからコンプレッサー平面までの距離が長く、EGRの半径が小さい場合、効率損失が最小であることがわかります。ただし、この領域は結露指数が最悪の領域にも対応します。これらの2つの値は反比例的であるため、適当な効率と低い結露指数の間でトレードオフを考える必要があります。

今後、次のステップでは、CFD(空力現象)と結露の側面を組み合わせた方法で考慮して最適化を実行する予定です。

反比例的な二つの目的値

 

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