ターボ機械の定常計算における動静翼間インターフェースのモデリング

ターボ機械の流れは、工学分野における最も複雑な流れの1つであり、その性能予測は非常に困難な課題です。(流れの剥離、高速流れ、回転、翼への高荷重、小さな隙間等)

これらの現象を実験により捉える場合、正確に定量化することは困難であり、また多額のコストが必要となります。したがって、定量化の精度を損なうことなくコスト削減を実現するために、ターボ機械業界において計算流体力学(CFD)がいち早く導入されたことは驚くことではありません。

 

 

 

動静翼間インターフェースの処理方法

ターボ機械のCFDシミュレーションの目標は、隣り合う回転翼列と静止翼列における流れの挙動を予測することです。そのためには、回転部分に対して「回転座標」を、静止部分に対しては「静止座標」と、複数の座標系を考慮する必要があることを意味します。回転座標系と静止座標系の間の接続面は、動静翼間インターフェースと呼ばれます。ターボ機械用のCFDソルバーでは、動静翼間インターフェースの様々な処理方法が搭載されています。適用する処理方法の違いによって計算結果に影響が及ぶため、適切な方法を選択することが重要です: たとえば、局所的なマッハ数、また効率や圧力比のような性能値にも影響を与えます。

選択する処理方法は、まず、定常計算、過渡流れの計算あるいはハーモニック計算といったシミュレーションの時間的性質に依存します。ここでは、産業用途における設計および製造レベルで最も使用される、定常計算の処理方法のみについて焦点を当てます。

動静翼間インターフェースを通して流れの情報を伝えるために、インターフェース面上で流れに関する物理量を周方向に平均化する必要があります。この周方向平均化のプロセスを、ミキシングプレーン法と呼びます。ミキシングプレーン法では、円周方向に平均化された流れの物理量を、動静翼間インターフェースを通して交換することにより、動静翼間干渉を考慮します。このことは、翼周りを通過する間に発生する翼の後流または剥離流れが、下流側に流入する前に周方向に混合されることを意味します。その結果、速度成分と圧力は周方向に均一となります。この近似方法は、回転側の回転速度が速いほど、より適切な物理モデルと見なされます。ミキシングプレーン法は、ターボ機械産業における動静翼間干渉の処理方法として、現在まで最も利用されている手法です。

FINE™/Turbo では、ミキシングプレーン法に基づくいくつかの異なる処理方法が利用可能です。以下に、1.5段遷音速軸流圧縮機の事例を用いて、これらの処理方法を紹介します。

 

下表には、FINE™/Turbo で利用可能な各処理方法とその概要を示しています。

 

 

下の図は、動静翼間インターフェース上の上流側から見た絶対マッハ数コンターを示しています。

図1. 軸方向に垂直な動静翼間インターフェース上の上流側から見た絶対マッハ数のコンター

 

 

上段の3つの処理方法は、ほぼ同様の結果を示しています。相違は非常にわずかで、基本的には同じ処理方法(表1の説明参照)による結果を示しています。しかしながら、下段の1Dおよび2Dの無反射条件による結果は異なります。特に、後流内およびハブ付近を見ると、これらの領域における拡散の影響が、上段の手法と比較して小さいことが分かります。

動静翼間インターフェースの下流側においても、同様の結果が見られます(ただし、ミキシングプロセスによる混合のため、各処理方法の相違は、図1の上流側ほど鮮明ではありません)。   

図2. 軸方向に垂直な動静翼間インターフェースの下流側から見た相対マッハ数のコンター

 

下流側における相違は、インターフェースの中央においてより顕著にみられます。1Dおよび2Dの無反射条件では、インターフェースの中央において、下流側に対する上流側での後流の影響が見られます。

 

結論

使用する動静翼間インターフェースの処理方法を決定する際に、一般的には、まず、”Full Non Matching Mixing Plane”、または”Conservative Coupling by Pitch-wise Rows”の選択を推奨します。これらの処理方法では、質量流量保存に優れ、たいていのケースにおいて、安定した解が得られます。衝撃波が発生する場合や、上述の方法で解が不安定になるような場合は、1Dまたは2Dの無反射法を使用することで、安定な解が得られることがあります。ただし、無反射法はフラックス保存を考慮した処理方法ではないため、これらの方法を使用する場合には、質量流量が適切に保存されているか注意を払う必要があります。最後に、”Local Conservative Coupling”法は、インペラー-ボリュート間に適用する場合にのみ推奨されます。

以下のフローチャートは、使用する動静翼間インターフェースの処理方法を決定する際の手順を示しています。但し、この手順は絶対的なものではなく、ベストプラクティスの一例としてご活用ください。